ラノベの全てが詰まってる 極上エンタメ 終わりのクロニクル 感想
私が面白いと思ったライトノベルを紹介していくという臭い企画になります。
本日はこちら、川上稔著作、電撃文庫から発刊されている「終わりのクロニクル」になります。
この本も面白かったラノベスレ等で話題にあがる、ある種有名なラノベといえます。
色々な意味で。
自分の中でも3本の指に入る作品かな。いや、一番かな。
ともかく好きです。
そしてある意味ラノベ界のトップに立っていると言っても過言ではないんですよね、厚さ的な意味で。
川上稔氏との会合
川上稔氏は1996年、パンツァーポリス1935という作品でで電撃ゲーム小説大賞金賞を受賞し作家デビューしました。
私はデビュー作からほぼ全ての作品を買い続けています。
この川上稔氏がオタク界で名を轟かせたのは、電撃文庫で現在執筆中の「境界線上のホライゾン」がTVアニメ化した事によると思います。
これはファン層はもちろん、作者も驚いたそうです。
私も驚きました。アニメ化に向く作品ではないからです。
今回紹介する「終わりのクロニクル」もアニメ化した「境界線上のホライゾン」もアニメ化に向かない共通点があります。
それは話が長い、という点です。
「終わりのクロニクル」の最終巻は文庫本でありながら1000ページを超える量となりました。
通称鈍器などといわれています。
圧倒的な物量とそれを可能にする執筆速度の速さ、それが氏の魅力でもあります。
日本一の設定厨
川上稔を一言であらわすなら私はこう呼びます。
「日本一の設定厨」
デビュー作から終わりのクロニクルまでの著作は「都市シリーズ」と呼ばれ、その後の「終わりのクロニクル」、「境界線上のホライゾン」と続いていくのですが、この作品達は全て川上氏の設定された「都市世界」と呼ばれる世界観の中の話となります。
これを詳細に説明すると膨大な量になってしまうのですが、この「都市世界」というのは年代の構造になっていて「都市シリーズ」も「終わりのクロニクル」も「境界線上のホライゾン」もその「都市世界」のとある年代の話となっています。
つまり繋がっています。
川上氏は著作をこの「都市世界」年代順に発刊していないので、まだ各作品間に直接関連がある話しは無いのですが、デビューから20年間、自分が考えた世界観の中の話をずっと書き続けているのです。
という事は、20年前からある程度これらの世界観をすでに持っていたという事になります。
この「終わりのクロニクル」も全部で7話、14冊、1万ページ超からなる話となりますが、1巻の冒頭は最終巻以降の話に繋がっています。
これは
「書き始めの段階から最後まで大筋のプロットが完成していて、最後まで大凡思い通りにかけていた」
という事であり、とんでもない量の伏線がありとあらゆるところに張り巡らされています。
1巻に出てくる保健の先生が重要人物であったとは夢にも思わなかった。
私が生きている間に全ての「都市世界」を書き上げられるんでしょうか?どこまでも付いて行きますが。
同じく作品間で世界観を共有する奈須きのこ氏
設定厨の比較としては、ゲームブランド「タイプムーン」の作品のシナリオを担当してる奈須きのこ氏を上げたいと思います。
氏の手掛ける作品は殆ど独特の世界観を共有しています。
それは代表作とも言えるゲーム「Fate/stay night」とその前日談となる「Fate/Zero」との関連性です。
「Fate/Zero」は作中での時系列は「Fate/stay night」よりも前の話となりますが、別作家より小説として発表されたのは「Fate/stay night」より後です。
内容は完全にリンクしており、先に設定を考えておかないとあそこまでの完成度の作品を作り上げるのは不可能であると思われます。
確か「Fate/stay night」のPCの初回版には設定資料集がついてきました。この設定資料集には「Fate/Zero」の登場人物の設定が乗っていたように思います。
奈須氏も頭の中には膨大な設定の世界観があるのだろうが、川上氏との違いはそのアウトプットのスピードです。
川上氏のアウトプットのスピードは奈須氏よりも相当早いです。
奈須氏の中にも、まだ作品化されていない沢山の構想があるのでしょうが、現時点ではアウトプットの多さで、川上氏が日本一の設定厨であると、私は思っています。
ライトノベルの到達点にして原点
昔どこかの書評サイトでこの言葉を見てうまいなぁ、と思った記憶があります
なるほど、と思いました。
この作品には萌えも笑いも、ボーイミーツガールも熱いバトルも詰まっているのです。
その魅力は語りつくせませんが、重厚で練り込まれたストーリーと魅力的なキャラ達だと思っています。
多くは語りませんが、この「終わりのクロニクル」という話は主人公たちだけの物語では終わりません。
主人公たちの父母世代、そして祖母祖父世代、三代にわたる話しになっています。
祖母祖父達がいったん収束させた問題が、父母世代で水面下で再発し、主人公世代達が解決する、といった具合です。
なので登場人物達もとても多いです。
そして主人公と中心となる仲間たちは皆、他の作品だと主役を張れるぐらいキャラが立っていますし、それぞれについて作中で深く掘り下げられます。
それが父母世代、祖母祖父世代にも相当数いるのです。
この作品を好きな人に、好きな登場人物は?と聞くとかなり迷うのではないでしょうか?
モブの名無しさん達ですら、もう相当アツいですから。
例として主人公の佐山御言(さやまみこと)だけwikipwdiaの終わりのクロニクルのページからその紹介文を引用として乗せます。
全竜交渉部隊交渉役兼リーダー格。尊秋多学院生徒会副会長。2年生。貘を連れる。ゲオルギウスを使う。 佐山・薫の義理の孫で、“悪役”になる事を望む少年。現在は天涯孤独で、田宮家の世話になっている。 愉命と共に死にかけた過去から、両親に関わることを考えると狭心症を起こす。薫と飛場・竜徹の教育により文武両道だが、中学時代の空手全国大会決勝で左手を砕き、幻痛を起こす後遺症を持つ。
う~ん、設定が詰まっていますね。
文武両道の超高スペック人間ですが少々変態なのが玉にキズであります。
これでもラノベ屈指の名主人公だと思うんですけど。
私の好きなキャラは主人公世代の中心人物のひとりである風見千里(かざみちさと)。
全くの一般人でしたがとある事件に居合わせ、巻き込まれる形で物語の中核をになう人物となります。
構成上、何かしらの因縁をもっている登場人物が多い中、読者にもっとも近い立場で、もう一人の主人公ともいえる人物です。
「もう怯えないから。もう震えないから。 もう、……自分を強いと思わないから。 だから力を貸して。――私が誰かを護るための力を!」
お勧めしにくいところもある
刺さる人にはとことん刺さる川上作品ですが、注意点も結構あります。
まずは「長い」こと。
これはプラスとも捉えられますが、圧倒的な物量は気軽に手を出す事を躊躇する要因になります。
また文体も改行と体言止めを多用する独特の文体でけっして読みやすいとは言えません。
こちらも年々改善されて読みやすくなっていると思うのですが、癖が強いですね。
それを差し引いてもラノベ読みならぜひ目を通しておいて損は無い本だと私は思っています。
とりあえず「終わりのクロニクル1」の上下巻をまずは読んでみるというのはどうでしょう?
これだけでも結構なボリュームなんですけれど。面白くなってくるのはさらに先なんですけれど。
十分雰囲気は味わえると思います。
ホライゾンも完結したら読みますよ
川上氏の最新作「境界線上のホライゾン」は現在も刊行中です。
また1および2の内容がアニメ化もされています。
冒頭でも書きましたがまさかのアニメ化。
終わクロもアニメ化には向かない作品化ですが、それより長ボリュームで完結していないホライゾンかと驚いたものです。
というかラノベ界では色々な意味で名を響かせていた川上氏がまさか明るみに出るとは…
初期作品から購読している私としては感慨深かったです。
割と最近にアニメ化された作品というのもあり、サンライズが作成を担当したのもあって結構話題になりました。
円盤も売れたようです。
なのでもし、少しでも興味を引かれたら、騙されたと思って読んでみてください。
ハマったら、当分眠れない日々をお約束します。
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