嫌がる妻を引きずって映画「テラフォーマーズ」を見てきたので感想を書く
4月29日に封切となった、話題の映画「テラフォーマーズ」。 妻を誘ったのですが強烈に反対されたので無理やり引きずって一緒に見てきました。
初日ですよ、初日。前日にネット上から予約したのですがゴールデンウイーク初日なので、席の確保ができるか不安でしたよ。 ふぅ、危ない危ない。
なぜこの映画を見たかったかというと、私原作のファンなんです。
このテラフォーマーズについて簡単に説明しますと週刊ヤングジャンプで連載されている、原作・原案:貴家悠、作画:橘賢一さんの漫画であります。
話の大まかなあらすじはSF的な設定を基調としたバトル漫画で、増えすぎた人類の移住先として火星のテラフォーミング計画に着手した人類はその方法として、火星に苔と我らの天敵「G」ことゴキブリを使用します。
超SF設定の結果、テラフォーミングに成功した火星にゴキブリ退治に向かった人類を待ち受けていたのは、超進化して人間大になったゴキブリ。この「テラフォーマー」と名付けられたゴキブリに対抗すべく、その「テラフォーマー」の臓器をも利用し、対抗する力を得た人類との戦いを描いている作品です。
映画では原作1巻までの内容で、テラフォーマーズと戦うべく「バグズ手術」を受けた主人公達はそれぞれ「虫」DNAを組み込まれており、とある液剤を注射することによって「昆虫人間」に変身し、テラフォーマーズと超絶バトルを繰り広げます。
この原作、非常に面白いんです。
空前絶後の敵と相対する、絶体絶命のバトル漫画
火星での戦いは、地球のさまざまな勢力の代理戦争的な側面をもっており、知略、謀略もばんばん交差しまくるのですが、それを差し置いて、バトルがとにかく熱い。
「テラフォーマー」は強敵で、対抗する力をもつ主人公達がバンバンやられていきます。 とにかく死ぬ。油断すると死ぬ。気を抜くと死ぬ。普通の漫画のヒロインポジションの女の子から真っ先にやられていくという、一体何に恨みがあるのか。
その強敵と「バグズ手術」で得た虫の力で戦っていくのですが、このあたりのノウハウが実にしっかりしていてSF的な設定に隙はなし。 個人のもつ虫の生態や能力などをしっかりバトルに応用してくるのでその虫の蘊蓄だけでも十分楽しめます。
そのかわりバトル漫画としては説明が多く、立ち読みに向いていない作品ではあります。 まぁ試しに一巻でも読んでみてください。漫画の好きな方は一瞬で引き込まれると思います。 会社の後輩はテラフォーマーこと「G」が気持ち悪いと言っていましたが、なに、なれます。
そんなテラフォーマーズ、この2016年4月、に相当力を入れてきています。 原作はコミックスの発売を遅らせ、3月、4月に16巻、17巻の連続刊行を実施。
映画版は原作の1部、に当たる部分を映画化しています。 コミックスは17巻で2部、が終了となっており、週刊ヤングジャンプでの連載は3部が掲載中。 そして4月からはアニメの2期目「テラフォーマーズ リベンジ」が放映。
さらに映画が4月29日から公開です。 これは集英社の本気が窺えますよね。
もちろんアニメも視聴中。 そして原作ファン。
ここまできたら映画も見に行くしかないじゃないですか(白目)。
超映画批評で5点
そんな決意を固める前にはてなユーザー御用達のはてなブックマークに衝撃の記事が私の目に飛び込んできました。
超映画批評-「テラフォーマーズ」5点(100点満点中)
えぇ…
この超映画批評というのは今更説明するのもはばかられるような映画批評の超有名サイトで、映画評論家の前田有一さんが「新作映画を公開直前にネタバレ無しで毒舌紹介」しているサイトです。
私はそこまで映画館に映画を観に行きませんが自分の観た映画の評価などを前田さんがどのように評価しているかを見に、ちょいちょい閲覧しているサイトでした。
なので前田さんの「毒舌」部分は了知しているつもりでありました。 それでも5点って…
妻に告げたら大爆笑でしたわ。 そしてもう観るしかないと心に決めましたわ。
封切までの間、嫌がる妻を説得、説得、説得。 妻は「あの予告のCGを見る限り面白いと思えない…」とか言ってましたわ。
そうかなー?(すっとぼけ)
とりあえず封切初日に突撃です。
劇場版 監督・キャスト
先に軽く監督とキャストのおさらいを。
監督:三池崇史
近年は原作つきの作品を多く手がけられているようです。ジャンルについても多岐にわたっていますが、極道物から、「忍たま乱太郎」、「ヤッターマン」、「逆転裁判」などのアニメ、ゲーム作品まで。
チャレンジャーなんでしょう。大変申し訳ないのですが、監督の作品一度も観たことありませんでした。
キャスト
小町小吉役:伊藤英明
主人公です。活躍します、多分。
秋田奈々緒役:武井咲
ヒロインポジ。原作準拠か気になります。
武藤仁役:山下智久
原作ではタイのムエタイボクサー。かなり活躍するはずでしょうが、どうなるか。
蛭間一郎役:山田孝之
原作ではすごい重要な役割。
ゴッド・リー役:ケイン・コスギ
原作ではイスラエル人の戦争屋。
森木明日香役:菊池凛子
原作では南アフリカ出身でこちらも重要人物。
堂島啓介役:加藤雅也
バグズ2号の艦長。原作でも艦長だけれどアメリカ人。
大張美奈役:小池栄子
バグズ2号の副艦長。原作でも副艦長だけれど中国人。
大迫空衣役:篠田麻里子
原作ではロシア人。全然活躍してなかった気がしますが…
手塚俊治役:滝藤賢一
原作ではインド人。活躍したっけ?
本多晃役:小栗旬
原作でも重要人物。あれ博士、イメチェンしました?
という事で全員日本人になっています。 これは邦画であることの宿命なんでしょうか。それとも続編を狙っているのか。
しかし豪華キャストであることにはかわりありません。
楽しみだなー。
にぎわう映画館、準備万端
いやもう準備万端ですわ。
当日は映画館に30分前についてポップコーンとパンフレットの購入も済ますという準備っぷり。
封切初日としてはどうだかわかりませんが、それなりに人も入っておりました。
そして観終えました。ポップコーンは美味しかったです。
結論から申し上げますと、思ったよりはつまらなくなかった、です。
5点は厳しすぎないですかね、前田さん。 しかし妻も同意見でしたが、お金を払って観るかといわれると、いやいや…となります。
テンポが悪い
いやもうテンポが悪いんです。途中凄く眠かった。
原作の緊張感を出したいのかもしれませんが、一挙手一投足のテンポが悪い。 ピンチの場面で始まる会話のテンポも悪い。
テラフォーマーに囲まれているピンチの最中でもなぜか会話。 そして空気を読んで襲ってこないテラフォーマー。
そんなこんなで最初から最後までパッとしない感じで物語が進んでいきます。 肝心のアクションシーンはラスト付近に集中していますが、それもイマイチパッとしない。
つまり良いところが見つからないんですね。 おっと1点ありました。
それぞれの登場人物は「バグズ手術」により、虫の能力をもっています。 その能力と虫の解説を声優の池田秀一さんがナレーションしてくれます。
このシーンは昆虫人間である事を強調すると共にテラフォーマーズの世界観を明確にする上で欠かせないものでもあります。 それを池田さんの名ナレーションで表現したのは良かったです。
次は人間関係の設定のいい加減さが気になりました。 仲間であるクルーたちとの関係の希薄さや、設定のいい加減さもそうなのですが、展開として矛盾するようなところがあります。
バグズ2号のクルーたちは艦長以外、バグズ手術で昆虫のDNAを組み込まれており、昆虫人間に変身できることを知らされていないまま、火星へと送り込まれました。
テラフォーマーズと対峙して初めて変身能力があることを知らされます。 その時どんな虫に変身できるかを知らされますが、仲間内でろくに虫の話もしていないのに、仲間たちの能力を熟知しているかのようなやり取りが、さも当然のように行われるんです。
中盤テラフォーマーから逃げるためにとあるクルーの能力を使うのですが、突然「お前の出番だぜ。」とか言い始めます。
え?お前そいつの能力知ってたん?そんなやり取り一切してないやろ! さっきまでめっちゃ喧嘩してたし…
描写不足が目立つんですよ、常に。
そんな抑揚のないテンポ、描写不足、説明不足で話が進み、見どころのはずの変身シーンなどもテラフォーマーズは律義に攻撃せず待ってくれる。そして盛り上がらないバトルシーン。
最初から最後まで30点なんです。 30点のシーンがずっと続く感じ。
そりゃ眠いですよ。最初から最後まで。
後はクルーに元ヤクザキャラが出てきます。このあたりが凄く監督らしいと妻が言っていました。 この二人、昆虫人間に変身する間もなくやられてしまうのですが、池田さんのナレーションで能力と虫の説明が入ります。
この二人の虫と能力が原作では伏線になっているのですが、無駄にそこを強調してきたりするんですよね。 あわよくば次回作を狙ってるんでしょうかね。
確かに次もいける終わり方ではありましたが…
どうしてこうなった。
先に書きましたがこの「テラフォーマーズ」という作品群、今年は相当売り出しに力を入れてきていると思いました。 コミックスの2カ月連続刊行に、原作の新展開、アニメ化に映画化。
なのにアニメの方もお世辞にも良いといえる出来ではありません。 1話を観た時はやべ、つまんない、どうしようかと思いましたし。
継続視聴してみてなんとか巻き返してきましたが、それもはっきりいって原作の力です。 少々作画が悪いのも、バトルシーンがしょぼいのも、キャラが崩壊気味なのも、大体原作どおりに進めば面白いんです。
原作が面白いから。
ちょっとやそっとの改悪じゃ、つまらなくならないくらい原作は面白い。
なのにその原作を普通に面白くない作品にしてしまったんだからある意味凄いとも言えます。
ちょっとパンフレットにも書いてあったのですが、実写映画化は無理があったのではないでしょうか。 実写映画化は技術的にも、予算的にもハードルが高すぎる表現が満載って。 原作者も「まじで!?」と耳を疑ったって。
色々難しかったのではないでしょうかね。 それでもこの4月に出さなければならなかった。
それでも出して叩かれるのはどうしたもんかって感じですよ。 実写映画は色々と無理があったのかもしれませんが、アニメ版もお世辞にも良いとはいえません。
同時期に始まった他のアニメも見ていますが、素晴らしいものも多く、もう少しましな制作会社に作ってもらえなかったのかと思ってしまいます。
売り出したかったんだとは思いますが、比較的どうしてこうなった的な結末でした。 少なくとも原作組はオコですよ。
後は原作未読の人の感想も聞いてみたいです。 比較対象をもたない人はどういった感想を持つのか。
この映画を見た直後、連続でディズニー映画の「ズートピア」を見てきました。
テラフォーマーズとは正反対の潤沢な予算と絶大な自信を持って成功を確信しながら送り出されたであろう素晴らしい完成度でした。 実際面白かったですし、眠くもなりませんでした。
劇場版のテラフォーマーズは5点とまではいいません。30点くらいかなぁ。
この感想を読んでくださった方でテラフォーマーズに興味を持ってくださった方はまずは原作を読んでみてください。
そんでもし映画版も気になってしまったら。
しっかり睡眠をとってのぞむことをおすすめします。
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